出産記(4) 誕生!
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息を深く吐くことと同時に大事だと聞いていたのは、陣痛の合間の痛くない時間にどれだけ心身を休められるかということ。全身の力を抜いてリラックスすること。
助産師さんはそれもリードしてくれた。「ピークが過ぎたら力を抜いて」と、いいタイミングで声をかけてくれる。その言葉で、力が知らず入っていたと気づくのです。
分娩台に乗ってから陣痛はますます強くなり、数回、助産師さんの言うことに返事ができないときもあった。呼吸するのに精一杯で。
NST(胎児心拍モニター)のバンドをつけられる。こちらはそれどころじゃないので、バンドを巻かれている違和感はあまり気にならなかった。
うねりが強くなると、自然とお腹が引っ込んで腰の下のほうが前に出る姿勢になる(お尻を突き出す、の反対方向ね)。フーーーーっと息を吐いたときに、丹田の辺りが引っ込むかたち。
分娩台で陣痛の波を数回やりすごしたあたりで助産師さんに「イキんでもいいのよ」と言われた。「いいんだ!」と思った。いつのまにか最終局面だったみたい。
それで、イキむ。自然と、おなかを引っ込める姿勢で。
しばらくしてから、ぼんやりと、「そういえば赤い矢印はいつやるんだっけ?」と思った。「今?」と思ったけどすでに自分の動きたい動きが決まってしまっていたので、よくわからなくなった。でも、その動きこそ赤い矢印の動きだったんだと後から気づいた。
※ 赤い矢印とは、マタニティヨガで毎週先生が見せてくれるイラストに描いてある矢印のことで、産道のかたちと、そこを通って赤ちゃんが出てくる、その方向を示したもの。
いざ赤ちゃんが出るという最後のイキミのときに、吐く息と同時に、産道の形に沿うように腰を動かす。それを繰り返す。恥骨を前に出し、仙骨を後ろに引く(=おなかが引っ込んで腰が前に出る)動きです。産道のカーブは、このように後ろから前に向かっているので。
ヨガの先生によると、お産のとき母体は流れ(赤ちゃんと子宮の働き)に身を任せる、やるべきことはただ2つ、「深い呼吸」と最後の場面での「赤い矢印の動き」だけ。……だそうです。
途中、酸素吸入マスクをつけられた。チラリと見えるNSTの画面では、特に赤ちゃんの心拍が下がっているようには見えなかったけど、定かではない。
この時点でも私は、基本的には赤ちゃん任せで、自分は“自然と力が入ってしまう”範囲でしかイキんでいなかった。赤い矢印の方向に。
でも助産師さんは、「お尻を突き出すようにイキんで!」と言う。
それだとやりにくいんだけど…と思いながら、ちょっと従ってみる。でもすぐにまた赤い矢印の方向に腰が動いてしまう。するとまた「お尻を突き出して!」と言われる。
このときすでに赤ちゃんの頭は出口のすぐ手前まで来ていたらしい。
この辺で、I先生が登場。(そう、この産院のたくさんの医師のなかでたまたま自分のドクターが当直の日に、お産が当たったのです。縁があるのか)
このとき私の体勢は、右を下にした横向き寝で左脚は持ち上げられて助産師さんの肩に乗っかっている状態。で、相変わらずフツーにイキんでいたら、その上げた脚の向こうにI先生の動く姿が見えた。そして何やら器具を手に取った様子でひとこと、「切開しようか」。
エ?
えええええーーーー!!!!
思わず、心の中で
あたしのバースプラン読んでないのかよっ!(いや、直接手渡したはず)
『会陰裂傷・切開の極力ないように最後はゆっくり産みたい』って書いたでしょ!!書いてあるでしょ!!!???
と、キレる。
でも実際は、「やめてください~!」と哀願(ほんとにこんな感じ)の声を出す。
「でも、危ないよー」と先生。何がだ?(胎児心拍が下がっているとは言われていない)
助産師さんが間に入って、「それじゃ、次で出るかな」と言う。
仕方ないので、次の陣痛で、初めて力を込めてイキんだ。数回来る収縮すべてでイキんだけれどまだ出なかったので、その波の最後の収縮が終わってもそのままイキみ続けた。ああ、無理してる……と思いながら。
赤ちゃんの頭が出る一瞬前だったか、脚の間を生温かい水がザッと流れるのがわかった。それから、つかえていたものが赤ちゃんの頭だったことがわかり、それがズルッと出た瞬間、助産師さんたちが声を上げ、私は、「股に何かある!」とはっきり感じた。
次に肩を出したら、あとはスルリと出てきた。
脚を上げた体勢のまま振り返ると、助産師さんが赤ちゃんを抱きかかえているのが見えた。
私に見せてくれた。男の子だとわかった。
泣き声は上がっていたのか、よくおぼえていない。
2時少し前に陣痛が始まって、5時05分、2896gの男の子が生まれた。
すぐに胸の上に乗せられ、抱っこした。
小さいような大きいような、自分の体の上にいるあたたかい生物に、なんだか感心した。すごいなあ。さっきまでおなかのなかにいたのに。


赤ちゃんは目を開いていた。
しばらくして、乳首をあてがってやると、吸う仕草を見せた。
* * *
胎盤はすぐに出た。
それから、縫合。出口の周辺が軽く裂けたみたい。でもいちばん軽い1度の裂傷だったようで、助産師さんから「切開しないで正解でしたね」と耳打ちされた……というのは後の話。
縫合しながら先生は、「初産はたいてい裂けるからね。言わなかったけど。(=だから切開したほうがいい)」なんて言う。「けっこう裂けてます?」と聞くと、「そうでもないね」。(--???
ひとしきり後処理が終わって、1時間後くらいか、起き上がってトイレに行ってみましょうと言われた。おそるおそる移動する。用を足すのはなんとかできたけど、立ち上がったらクラクラして歩けなくなった。以前、献血後に動けなくなったのと同じ症状。そこそこ出血したもんね…。
畳の上で少し休む。前日6時の夕飯以降なにも食べていないので空腹だった。るいさるさんからもらった「ゴーヤ黒糖」をひとつ食べて回復する。
結局、陣痛よりも分娩よりも、この後産と縫合と脳貧血(?)のほうがいやだった。産むまでは無言で呼吸していたのに後産からは「痛い!いたーい!」とか言っちゃったし。やはり、痛みの種類が違う。(痛みに強いタイプじゃないのです)
赤ちゃんと一緒に元いた部屋に戻ったのは9時近かった。朝食を食べる。
赤ちゃんはベビーコッドの上で静かに眠っている。というより、ぐったりしている。重労働だったもんね。お互いに、おつかれさま!
そしてこの瞬間から、24時間お仕え生活の始まりです。
~そのうち、つづくかも~

そうそう。
>つかえていたものが赤ちゃんの頭だったことがわかり
本当に、そんな感じでした。
>あたしのバースプラン読んでないのかよっ!
あははは、、、ここ↑読んで、笑ってしまいました(^o^)
分娩台の上でも、意識がハッキリされていたんですね。すごいなあ。
私は自分のバーズプランの事なんて、すっかり頭から飛んでいましたよ。
私の旦那さん、無事、立ち会ってくれたんです。
(全然こわくなかった、大変そうじゃなかったし、ですって〜^^)
娘が生まれた瞬間の写真まで撮ってくれていたのを
つい数日前に知りまして、ちょっと嬉しかったです。

私も、「赤い矢印どこだ?」「ここか?」「きっとここだ!」と
自然に探し当てた感じでした。
medecoちゃんの出産記を読んでいると、
追体験するとともに、
もう一度トライしてもいっかなー、なんて思ってしまうよ。
*でも、やっぱり、その場で「こんなはずでは」と
思ってしまいそう(笑

そのうち具体的な動きを直接聞きにいってもいい(笑)?
ダッコの手はお貸ししますので♪
初産にしてはスルンと出産されたように思っていたけれど、やっぱり重労働だよね。ただね、めでこはんの語りがたんたんとしていて、そこがスゴイな~と思った。改めまして、本当にお疲れ様でした。

キョウ君もめでこさんも、お疲れ様でした!
それにしても切開、拒めてよかった。意外と小心な先生ですね。。
お尻まで裂けた人知ってますが、それでも何より喜が大きいのだから(その人は)、お医者さんには、そういう気持ちを分かってほしいものです。
くぅぅ、、泣けました!そして、6年前の私に読ませてあげたかった!!大人と子どもの日記(めでこちゃん:私)みたいじゃよ・・・(爆)。
切開。私なんて、ジョキっ!とスパンっ!と行ったのに、それでも四方八方に裂けて(<看護婦さんいわく、今まで見た中で最高の裂け具合・怖!)こんなんだったら、切る必要あったのか!って思ったよ~。
**うちの姉の入院はどれもほとんど保険適応外だったらしく、母と姉は「赤ちゃんが無事に生まれてきたんだから、そんなことはどうでもいい」と言ってるけど、私と妹は怒りまくってます。そんな社会、絶対におかしい!!
出産直後のめでこちゃん、とってもとっても、とーーーーーーーーっても美しい!!うっとり♪

しかも初産のときは切ったのに裂けてそれはもう大変。おかげで2回目もそれに沿ってすこし裂けたのよね・・・・・縫合は麻酔してくれなかったの?
後産、私もこれいやだったな。しかも2回目のときは出なくてはがされたので死ぬかと思ったよ・・・・・
旦那さん、立ち会ってくれたんですね。よかったですね~♪
「怖くなかった」とは、いいお産だったんですね。
MSは、ビデオカメラをまわしてました。
持ってきているのを助産師さんが知っていたようで、
産まれる少し前に、「ご主人、そろそろですよ」と声をかけてくれました(^^;
お産のとき、自分では最初から最後まで
意識がはっきりしているつもりでいましたが、
当日振り返ってみると詳細を思い出せない部分がちらほらと。
やはり必死だったんだなぁと思いました。
たった一ヶ月少し前のことなのに、その後が濃密だからか、
すでに懐かしいですね。
>「赤い矢印どこだ?」「ここか?」「きっとここだ!」
フフフ。そうそう、そんな感じ。
やっぱり自然とわかるものだったね♪
A先生にそう報告したいね。
出産自体はもう一度トライしてもいいけど、
(と言いつついざ始まると、やっぱキツイ~~~!ってことになりそうだけど)
妊娠を自覚してからの9ヶ月弱の日々は長かったなあ。
特に初期のもどかしさ、ツワリの辛さを思い出すと尻込みしちゃうカモ。
>そのうち具体的な動きを直接聞きにいってもいい(笑)?
来て来て♪みっちりレクチャーしますわ。
ついでに、布おむつ生活レポなども。
抱っこの手も歓迎~。
そうだね~。結果的に、スルン、と言える内容だったけど、
やはりお産は、心身が全力でがんばる一大イベントでした。
淡々としているのは、陣痛が始まったら妙に肝が据わったからかも。
それまではお産を想像して多少ドキドキしたりもしていたけど、
いざ、「絶対に引き返せない、なおかつ集中しないとやられるレース」
が始まると人間て開き直れるもんだなーと思いましたよ!
私もゆりこちゃんの出産記を読んでウルっとしちゃったのよ~
日赤自体は、初産の切開率は6~7割と聞いていたの。
(リスク産や難しいお産が多く集まる大病院だから、
少ない数字ではないけど、すごく多いわけでもないと思う)
でもきっとこの先生が「初産一律切開」の方針だったのね。
そうか、慎重というより小心なのかも。。。
てゆーか、切ることよりも、裂けない介助の方法を研究してほしいよ。
ほんと、「赤ちゃんにやさしい」けど、妊産婦にやさしくない病院かもしれないわ。
(…といいつつ、他の多くの部分では、日赤にかなり満足してるんだけどね)
わ。なんてゴーカ!<100人のママちゃんの称賛
>切開。私なんて、(…以下略)
い、痛っ。。読んでるだけで痛い。。。
裂けるのはあきらめついても、切られてなお裂けたら腹たつね(笑
でも、若いママちゃんの一生懸命のお産も感動的だったよぉ。
お姉さんの件、
当事者は無事生まれたことの喜びが大きくて、
生まれちゃったら、もうそんなのどうでもいい、になりがちだよね。
生まれる前でもそうかも。「無事生まれてくれれば何でもいい」って。
でも、周りの人間はそうは思わないから、悪い評判が立ったり、
産むことへのためらいが生まれたりするのよね~
出産直後の写真、自分でもお気に入りなの。雰囲気が。ウフ。
わっ!まきぷも「切ったのに裂けた」経験者なんだ。
それだったら切らないほうがマシだったんでは?って思うけど。。これって介助者の腕次第なんだねぇ。
麻酔はしてくれたけど、量が少なめだったのか時折チクッとして、「痛い!」というと麻酔を足してくれたよ。てゆーか麻酔の針も痛かったよ。注射大嫌いだし。。><。
後産は経産婦のほうがきついっていうよね。
「胎盤はがし代」を取られたって話を聞いたことがあるけど、請求書に記載されてた?
(↑なんじゃそりゃと思ったよ。でも手技なんだそうで)